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翻訳マネージャーコラム

字幕翻訳で差がでる映画の面白さについて

2019年04月22日

字幕翻訳の業務

 

字幕翻訳と一言で言ってもその業務内容は多岐にわたり、それぞれ複雑な手順を踏まなければならなかったり、翻訳をする上で厳しいルールなどが存在したりします。まず字幕翻訳には、「スポッティング」という作業が必要になります。スポッティングとはシーンごとに原音に合わせて字幕を出すタイミングと消すタイミングを指定することです。1秒を30フレームと数え、原音のセリフが始まる2フレーム前に字幕が表れ、セリフが終わってから約15フレーム経ってから字幕が消えるように指示を出す作業(ただし依頼主によって設定が異なる場合も有り)で、細やかで神経を使う作業の一種です。大御所の字幕翻訳者の中にはこの作業を行わず、翻訳作業のみする人もいるようですが、基本的にはこの機械的な作業も翻訳者が行います。その後、原音のセリフを翻訳していく作業が始まるのですが、1秒につき4文字しか使えないというルールに則り、各字幕につき何文字まで使用できるのかを算出する作業も翻訳者には待っています。

字幕翻訳時のポイント

字幕翻訳において最も重要なポイントとも言えるのが、「1秒4文字」ルールです。1秒4文字ルールとは英語音声のものを日本語字幕にする際のルールで、日本語音声を英語字幕にする際は「1秒につき10のアルファベット」と定められています。これは読むスピードが遅いと考えられる子どもや年配者であっても目で追える文字量だと考えられているからです。また一度に二行までとも定められています。つまりひとつのシーンに3秒あれば12文字まで書けるという計算で、最長2行を使って表示することになります。この文字数制限は字幕翻訳者が破ってはいけない黄金ルールであり、翻訳作業を困難にするやっかいなルールでもあるのです。基本的に会話はテンポがよくスピーディーで、人間が文字を目で追って読めるスピードの文字数をはるかに上回ります。さらに会話の内容によってはとても早口で話す場合もあります。

そこで必要になるポイントの2つ目は、訳すポイントを絞るということです。文字数は多いのにそれにかけられている秒数は短いというケースも出てくるので、話された内容すべてを訳していてはあっという間に1秒4文字ルールをやぶってしまいます。省いても物語やシーンを理解する上で影響がないものは省いていくなどの判断力が字幕翻訳者には求められます。その上留意しなければいけないのが日本語の会話の流れです。各文の日本語訳に問題はなくても通して読むと会話がうまく繋がらなければ視聴者はシーンを全く理解できません。英文をそのまま日本語に短く訳すのではなく、時には英文とは離れた訳にする必要もあります。たとえば、「Max came to my place and I went to a restaurant in the shopping mall to have dinner with him.」とあれば、「マックスと夕食を食べに行った」のように簡潔にする必要があります。わざわざマックスが来て彼とショッピングモールの中の~と詳しく述べる必要はありません。しかしながら、次の会話が「ショッピングモール」に関することであれば、ショッピングモールを省くことはできないので、「マックスとモールにあるレストランに行った」などと訳すほうがベターです。翻訳者は前後の会話の流れを汲んで字幕に入れる情報と省く情報を吟味しなければいけません。

3つ目は文化と言語の理解度です。映画などではユーモアあふれた表現や冗談が多々出てきますが、文化を知らなければ冗談を理解するのは不可能と言っても過言ではありません。たとえば会話中で、現地でのみ流行しているものや有名人などが冗談として引用されている場合、それらを日本語の中でそのまま使うと視聴者は「え、誰?」となりユーモアを理解することができません。「アジズ・アンサリ」という人物はアメリアで人気のコメディアンですが日本ではあまり知られていません。彼の名が引用として使用されている場合には「大御所芸人」などと言い換え、日本人視聴者が理解できるよう図る必要もあります。そして言語面では、英語には数多くのイディオムがあります。イディオムの意味そのものは辞書でいくらでも出てきますが、それを会話の流れで辞書に載っている日本語訳を適用すると意図したユーモアが表せられない場合もあります。日本語に訳した会話の流れで、そのイディオムのユーモアさを伝えるには高度な英語および日本語の能力が必要とされます。

字幕翻訳はスキルの高い業務

字幕翻訳には、制約された時間の範囲内で、会話の流れが不自然にならないよう細心の注意を払いながら余計な箇所を省いて原文を翻訳しなければいけません。また物語には冗談のやり取り、ユーモアあふれたイディオムの使用、現地でのみ有名な人物や流行しているものの引用などがあります。言語の機能や文化を深く理解した上で日本語に置き換え、日本語でも笑いとユーモアを届けるという高度な技術が必要です。ただ流れてくる英語をそのまま日本語に訳し、文化などの背景知識を無視した翻訳者がてがけた字幕翻訳はつまらない作品の一言で片づけられてしまうでしょう。原作の素晴らしさと面白さは、深い言語知識と文化知識を持ち、それを翻訳に生かすことのできる翻訳者によってはじめて伝えられます。英語翻訳の依頼は、高い字幕翻訳技術と実績を持つ翻訳者が在籍するプロの翻訳会社に依頼することをおすすめします。

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